bjリーグが「公式記録の訂正」で済まそうとした件について
2010/3/14 19:49 | by wolfy |2010/3/7の新潟@京都戦で、ボスティック(京都)が3ポイントライン付近で相手を「肘打ち」したことによって「テクニカルファウル」が宣せられ、新潟に1FTAが与えられた件について、bjリーグ公式で、「公式記録訂正のお知らせ」と言う形で、テクニカルを「フレグラント1」に訂正しました。
でもちょっとその措置は適切だったのでしょうか。
下された措置はもちろん、訂正措置を含めて。
【訂正の是非について】
個人的にはこの訂正自体がルール上で定義されている項目を逸脱しており、容認しうるものではありません。
まず当該試合の担当審判は漆間・大家・山本の3氏で、当該プレーの判定をしたのは山本氏で、その後大家氏と協議して判定を確定させています。bjルール上、肘打ちについては「必要以上振り回し」接触しない場合は「テクニカル」です。
公式ルール上、プレーヤーのテクニカルファウルと定義しているものは以下の9件。
ⅰ)審判に対して失礼な態度で話しかける。
ⅱ)審判の判定に対して不満や不服を表現する。
ⅲ)審判の判定や決定に従わないで無視する。
ⅳ)相手チームや観客に対して侮辱したり、挑発したり、あおったりする。
ⅴ)ファウルをされたように見せかけて床にたおれる。
ⅵ)リングをつかんで必要以上に体重をかける。
ただし、ダンク・ショットの際にやむを得ず瞬間的にリングをつかむことはさしつかえない。ほかのプレイヤーが負傷するのを避けようとしたと審判が判断したときは、リングをつかんでもテクニカル・ファウルとはしない。
ⅶ)相手チームのプレイヤーが近接しているときにひじを必要以上に振りまわす。(接触がなかったとき)
ⅷ)相手に当たらなくても、殴ろうとする。
ⅸ)スロー・インしようとするプレイヤーに触れ合いを起こす。
接触していなければ第7項に抵触します。接触していれば、違う扱いになります。
また、Art.46.2.7)には以下のような記載があります。
7) ゲーム終了の合図が鳴ったあとは処置の訂正はできない。
得点、ファウルの数、タイム・アウトの数などについてのスコアラーによる記録のまちがいおよびタイマーによるゲーム・クロックの操作の誤りによる競技時間の計測のまちがいは、審判の承認によっていつでも訂正することができる。ただし、ゲーム終了の合図が鳴ったあとは処置の訂正はできない。
ということで、スコアラーのよる記録の間違いでないことはビデオ上、テクニカルファウルの動作をしていることから明らかで、本来は訂正されるべき事象ではありません。ルールにない対応がされていることになります。(なおビデオ上はその肘打ちは接触しているように見えます。)
拡大的に援用をするとしても得点者やリバウンドなど、明らかに間違って記録されているものの訂正は(よくありますが)止むを得ないと思いますが、これについては審判の尊厳自体をリーグ自身が損なっている行為です。
また、これについて当該審判に何らかの措置が下されるのかが有無を含めて明白でないということですので、余計に問題が大きいと感じます。
なお、bjtvではこのファウルがパンチングでないのか、という観客の音声が記録されていますが、英語より発生しているため、punchingは拳で殴ることを指しており、肘はそれに該当しません。これはフレグラントの程度に議論が移ります。(またパンチングは当たらなくとも宣せられますが、過度の肘については現行ルールでは接触しなければテクニカルです)
【訂正を何故行ったのか】
このファウルは確かにフレグラントファウルを吹かれるべきもので、実際には「フレグラント2」が適切と思われます。ただ、bjリーグの当該項目に関する定義は以下のように曖昧なものです。
Art.36
1. フレグラント・ファウル・ペナルティ1は、必要以上のハードな触れ合いをいう。フレグラント・ファウル・ペナルティ1を2回宣せられたプレイヤーは失格・退場になる。2. フレグラント・ファウル・ペナルティ2は、相手プレイヤーが負傷する可能性がある必要以上のハードな触れ合いをいう。フレグラント・ファウル・ペナルティ2を宣せられたプレイヤーは失格・退場になる。
負傷する可能性があるというのはあまりにも曖昧です。また笛が鳴ってから意図的に相手を肘でヒットしに行っているように見えるプレーでもありました。なお、NBAのルール(FIBAルールでは現行ルールでは従来のアンスポの記載しかありませんので記載しません)によると以下の通りです。
Rule No.12 B. Section IV–Flagrant Foul
a. If contact committed against a player, with or without the ball, is interpreted to be unnecessary, a flagrant foul–penalty (1) will be assessed. A personal foul is charged to the offender and a team foul is charged to the team.b. If contact committed against a player, with or without the ball, is interpret-ed to be unnecessary and excessive, a flagrant foul–penalty (2) will be assessed. A personal foul is charged to the offender and a team foul is charged to the team.
となっており、不必要であれば「1」、加えて過度であれば「2」と極めて明確に定義されています。なおNBAルールではパンチング以外にも以下の退場規定があります。
No.12-A-V-l
(1) A punching foul
(2) A fighting foul
(3) An elbow foul which makes contact above shoulder level
(4) An attempted punch which does not make contact
(5) Deliberately entering the stands other than as a continuance of play
これを「フレグラント1」とあえて訂正した理由と言えば、恐らく怪我をする可能性を否定したい、あるいは出場停止措置を執るのが適切ではないなど、別個の判断と合わせてされた可能性があります。
また試合終了後に措置を執ることができるのは先に挙げた項目と、以下のArt.33.7に記載された項目のみしか定義されていません。
ゲーム終了後でもVTRなどでチーム・メンバーやチーム関係者のスポーツマンらしくないふるまいやパンチング・ファウルが確認された場合は、罰金あるいは出場停止またはその両方が科される。
あえて、「フレグラント1」とした理由は、怪我をさせる可能性があったことを意図的に否定し、これらの措置を執らせない様に予防的に措置を講じる必要があったのではないか、とすら考えます。
#先週の規律委員会にかかっていないから、あえてそうしているというのであれば、ある意味笑っちゃうしかないです。
さて、実際何がどうだったかという問題はありますが、この種のファウルに関する規定が不十分であり、取られた措置がルールで定義されていない「超法規的措置」が取られていることと合わせて、ルールの再定義の必要性と、恣意的運用をしないようにお願いしたいな、と思う次第です。
